5月16日、東京芸術劇場で開催された、大友直人プロデュースによる東京芸術劇場シリーズ第100回コンサートに足を運びました。
大友さんが1992年から続けているこのシリーズ、100回目となる節目のコンサートは、同時代の映像音楽ばかりを選んだ意欲的な内容でした。
「今生きている音楽をいっしょに楽しんでいただこう」という趣旨で、あえて、クラシックの大曲ではなく、映像音楽を選んだとのこと。
目玉は、羽田健太郎作「交響曲 宇宙戦艦ヤマト」の25年ぶり、初演と同じ大友直人指揮による再演です。
第1部は、
・坂本龍一『戦場のメリークリスマス』テーマ曲
・三枝茂彰『太平記』から「はかなくも美しく燃え」、『優駿 ORACION』から“誕生”
・服部隆之『華麗なる一族』メインテーマ
と小品中心の内容。
三枝さんの作品はCDで聴いているとあまりわからないのですが、演奏会を見ると、なかなか難しい作品。シンプルな曲に思えて、ヴァイオリンの譜面は真っ黒でした。
『太平記』からの曲は、オリジナルでは胡弓のソロが入りますが、今回は、ヴァイオリン(大谷康子)ソロで胡弓風に演奏。
『優駿 ORACION』“誕生”と『華麗なる一族』メインテーマは合唱付きでの演奏でした。
休憩をはさんで第2部が羽田健太郎作曲の「交響曲 宇宙戦艦ヤマト」です。
羽田先生がヤマトのモチーフをもとに書きあげた4楽章の交響曲。1984年にNHK交響楽団の演奏で初演され、レコード/CDと映像ソフト(ビデオ、LD、のちにDVD)になりました(演出は実相寺昭雄監督)。
以来、一度も再演されてないのですね。
そもそも、羽田先生が「楽譜はぜんぶチリ紙交換に出した」と言っていたので、この曲の譜面も残っているかどうか心配だったのですよ。
さすがに演奏用作品なので、どこかに残っていたのでしょう。
今回が25年ぶり、2度目の演奏ということになります。
席が前のほうだったのでステージの譜面が見えたのですが、表紙には、
「ヤマト交響曲
KENTARO HANEDA」
とデカデカと書かれていました。
これが羽田先生が作曲時につけていたタイトルだったようです。
初演時は、川島和子(ヴォーカリーズ)さんと徳永二男さん(ヴァイオリン)、羽田先生自身(ピアノ)がソリストを務めましたが、今回は、ソプラノ:安井陽子さん、ヴァイオリン:大谷康子さん、ピアノ:若林 顕さんの3人がソロを担当しています。
クラシックコンサートにはめずらしく、大友直人さんがマイクを持って羽田先生とこの交響曲のことを語っていたのが印象的。
羽田先生、宮川先生と大友さんが、いっしょに音楽を作り上げていたそうなのですね。
当時、ものすごく苦労して書きあげたという話を、私も羽田先生から直接うかがったことがあります。
第100回という節目にこの曲を取り上げた思いが伝わりました。
初演当時20代だった大友さんも、すでに50歳。25年を経て、初演よりもよく練られた、奥行のある力の入った演奏になったと思います。ことにヴァイオリンとピアノのドッペルコンチェルトの形式で演奏される最終楽章「明日への希望」は2人のソリストとオーケストラ渾身の迫力ある演奏でした。
アンコールは冨田勲の『新日本紀行』のテーマ。
これも大友直人指揮、東京交響楽団の演奏でCD化されている作品です。
ぜいたくな余韻に包まれたコンサートでした。
それにしても、この「交響曲 宇宙戦艦ヤマト」、今手に入る映像・音楽ソフトがないのが、なんとも残念。
紙ジャケット、りマスタリングで復刻された「宇宙戦艦ヤマト」生誕30周年記念CD-BOX(10枚組)もすでに入手困難。2005年に再発されたDVD版も同じです。
再発が困難なら、今回のような貴重な再演の機会にレコーディングしてリリースしてくれたら…。
<set list>
第1部
- 坂本龍一 映画『戦場のメリークリスマス』テーマ曲
- 三枝茂彰 NHK大河ドラマ『太平記』から「はかなくも美しく燃え」(藤夜叉のテーマ」
- 三枝茂彰 映画『優駿 ORACION』より“誕生”
- 服部隆之 テレビドラマ『華麗なる一族』からメインテーマ(原典版)
第2部
羽田健太郎(テーマ・モチーフ:宮川 泰)
交響曲「宇宙戦艦ヤマト」
Grand Symphony Yamato
第1楽章「誕生」
第2楽章「闘い」
第3楽章「祈り」
第4楽章「明日への希望」
アンコール
指揮:大友直人
東京交響楽団
ヴォカリーズ:安井陽子(ソプラノ)
ヴァイオリン:大谷康子
ピアノ:若林 顕
混声合唱:東響コーラス
◎新日本紀行/冨田勲の音楽
大友直人指揮、東京交響楽団の演奏で「新日本紀行」を収録。

◎華麗なる一族 オリジナル・サウンドトラック
服部隆之指揮、ロンドンフィルハーモニア管弦楽団の演奏。
