7月19日、サントリーホールで開催された、ボブ佐久間編曲・指揮によるコンサート「シネマ名曲倶楽部」に足を運びました。
東京都交響楽団演奏会のスペシャル・プログラムです。名古屋フィルのミュージック・ディレクターとして活躍するボブ佐久間さんがゲスト・コンダクターとして登壇。映画音楽の名曲をたっぷり聴かせてくれる、豊かなひとときとなりました。
ボブ佐久間といえば、『科学忍者隊ガッチャマン』『宇宙の騎士テッカマン』『ゴワッパー5ゴーダム』などのタツノコSFアクションアニメや『スーパーロボット・レッドバロン』『スーパーロボット・マッハバロン』の音楽で記憶に残る作曲家。70年代前半に小林亜星と組んだ数々のアレンジ作品でのクールなサウンドは忘れられません。その代表作が、「ガッチャマンの歌」。シカゴのサウンドを意識したというブラスロック風アレンジは、今聴いてもカッコいい。
しかし、'77年に渡米し、一時は海外を拠点に音楽活動を続けていました。「三沢郷のように、ボブ佐久間も日本に戻って来ないのでは…」とサントラファンは心配していましたが、'85年に帰国。帰国後は、NHK紀行番組『いい旅、日本』、TBSテレビドラマ『先生のお気に入り』といったTV番組の音楽を手がけていますが、そこに『ガッチャマン』のころのブラスロック・サウンドはありませんでした。
その代わりにボブ佐久間が手に入れたのが、ハリウッドで学んだ本格的なオーケストレーションと指揮の技術でした。アレンジャーとして、指揮者として、NHK交響楽団や東京交響楽団、京都市交響楽団などの国内主要オーケストラをはじめ、海外のオーケストラからもゲスト・コンダクターとして招かれるようになります。2006年11月には、英国のロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団とのコンサートも成功させ、いまや国際的な指揮者として活躍しています。
そんなボブさんが映像音楽のコンサートを開催するというのですから、期待せずにいられません。
曲目は、「007メドレー」、「慕情」「ロミオとジュリエット」「ひまわり」「ミッション」など、歴史的な名画、名曲ぞろい。その中に「男はつらいよ」など渋い曲目が挿入されているのが面白い。
2部の30分におよぶディズニー名曲メドレーでは、ときにロマンティック、ときにジャジー、ときににぎやかにと、多彩なアレンジで12作品から15曲を続けて演奏。第1部よりも遊び心がはじけた楽しい演奏に大拍手でした。
『ガッチャマン』のころからのファンとしてボブさんらしさが聴けたなぁと思ったのは、「007メドレー」。パンチの効いたサウンドはまさに初期ボブ佐久間サウンドをほうふつさせるものです。「ジェームズ・ボンドのテーマ」では、原曲でエレキギターが奏でているフレーズをコントラバスのボウイングで演奏させるアレンジが効いていました。
オーケストラの楽器それぞれに見せ場を持たせるアレンジと、終始、オーケストラメンバーとコミュニケーションをとりながら音楽を作っていく指揮ぶりが印象的でした。オーケストラとよい関係を築くボブさんの人柄も、ボブ佐久間サウンドの秘密なのかもしれません。
<set list>
第1部
◆007メドレー
- ジェームズ・ボンドのテーマ
- ロシアより愛をこめて
- ゴールド・フィンガー
◆Love at the Movies vol.1
- 慕情
- 時の過ぎゆくまま (『カサブランカ』より)
- ロミオとジュリエット
- ある愛の詩
- ひまわり
- 男はつらいよ
- 愛はきらめきの中に (『サタデー・ナイト・フィーバー』より)
- 追憶
- ガブリエルのオーボエ (『ミッション』より)
- 愛を感じて (『ライオン・キング』より)
- オールウェイズ・オブ・ユー (『ボディー・ガード』より)
- 愛と哀しみの果て
第2部
◆Chansons d'amour by ヴァイオリン・ソロ&オーケストラ
- 巴里の空の下セーヌは流れる
- 枯葉
- 薔薇色の人生
- サン・トワ・マミー
◆Dream at Disney
- 序曲
- いつか王子さまが〜ハイ・ホー (『白雪姫』より)
- ミッキー・マウス・マーチ
- ララルー (『わんわん物語り』より)
- 美女と野獣
- かがやく昼下がり (『不思議の国のアリス』より)
- パート・オブ・ユア・ワールド/アンダー・ザ・シー (『リトル・マーメイド』より)
- ホール・ニュー・ワールド (『アラジン』より)
- 愛のうたごえ (『バンビ』より)
- サムデイ (『ノートルダムの鐘』より)
- いつか夢で (『眠れる森の美女』より)
- チム・チム・チェリー〜スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス (『メリー・ポピンズ』より)
- 星に願いを (『ピノキオ』より)
◆アンコール
- シング・シング・シング
編曲・指揮:ボブ佐久間
東京都交響楽団
<ボブ佐久間作品集>
今回の演奏曲目とは関係ないですが、ほんとはこういう作品のコンサートが聴きたいんですよね。