2009年08月27日

忘れられた名作「シリウスの伝説」

 すぎやまこういちのアニメ音楽といえば、『伝説巨神イデオン』『サイボーグ009』『劇場版 科学忍者隊ガッチャマン』の3本を上げる人がほとんどでしょう。まれに『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』という人もいるかもしれません。

 しかし、私にはもう1本、忘れられないすぎやまこういちのアニメ作品があります。

 『シリウスの伝説』。1981年に公開されたサンリオ製作のアニメーション映画です。

 この映画は公開当時、劇場で観ました。
 ロミオとジュリエットの悲恋をファンタジーの世界に置き換えた物語で、映画としては、当時の私にはちょっと退屈でした。けれど、映像と音楽の美しさは深く印象に残っています。特に、すぎやまこういちの音楽がすばらしかった。

 『劇場版 科学忍者隊ガッチャマン』に続き、すぎやまこういちの音楽をNHK交響楽団が演奏しています。主題曲「時よゆるやかに」は、上品で美しいメロディに、シンフォニックなアレンジが感動を呼ぶ名曲。サーカスの歌も絶品でした。当時、ワーナーパイオニアから発売されていたサウンドトラック・アルバムは愛聴盤の1枚でした。

 その後、『シリウスの伝説』は、ほとんど忘れられた存在となり、名曲「時よゆるやかに」も知る人が少なくなっているのが残念です。

 現在、この曲を聴くことはできないのでしょうか?

 実は、歌入りとインスト、2種類をCDで聴くことができます。

 歌入りは、サーカスのベストアルバム「GOLDEN☆BEST/サーカス」に収録。このアルバムは、サーカスの代表曲「Mr.サマータイム」「アメリカン・フィーリング」をはじめ、ミシェル・ルグランが音楽を担当した映画『火の鳥』主題歌のサーカス・ヴァージョンや、石立鉄男主演のTVドラマ『鉄道公安官』主題歌「ホームタウン急行」、TVアニメ『まんが日本史』主題歌「風のメルヘン」なども収録されているお買い得盤です。

 また、東京都交響楽団がすぎやまこういち作品を本人のアレンジで録音したアルバム「君だけに愛を」にも、「時よゆるやかに」が取り上げられています。こちらは、オリジナルのアレンジを生かしたインストゥルメンタル・ヴァージョン。映画のサントラと同じイメージで楽しむことができます。このアルバムには、『伝説巨神イデオン』の副主題歌「コスモスに君と」も収録されているので、『イデオン』ファンにも見逃せない1枚でしょう。

 できれば、『シリウスの伝説』オリジナル・サウンドトラックの復刻も実現してほしいところ。すぎやまこういちが生み出した音楽のすばらしさ、この時期のアニメ音楽の質の高さを実感できる名作なのですから。

GOLDEN☆BEST/サーカス 歌の贈り物
 サーカスのデビュー25周年を記念して、過去8レーベルに残した音源を網羅した集大成ベスト盤。2曲の新録音曲も収録。

 : GOLDEN☆BEST/サーカス 歌の贈り物

君だけに愛を 東京都交響楽団×すぎやまこういちヒット曲集
 タイガースの名曲からアニメ主題歌まで、すぎやまこういち作品を本人の編曲で甦らせた管弦楽曲集。「コスモスに君と」は『伝説巨神イデオン』オリジナルBGMをグレードアップした雰囲気の仕上がり。

 : 君だけに愛を 東京都交響楽団×すぎやまこういちヒット曲集

シリウスの伝説 [DVD]
 映画本編もDVD化されました。美しい音楽と映像を確認したいという方は、ぜひ本編も。

 : シリウスの伝説

posted by 腹巻猫 at 21:20| CD

2009年08月26日

ついに発売!「伝説巨神イデオン 総音楽集」

 『伝説巨神イデオン 総音楽集』が8月26日に発売されました。

 キングレコード伝統の「総音楽集」最新アルバムですよ。『無敵超人ザンボット3/無敵鋼人ダイターン3』『機動戦士ガンダム 劇場版』『機動戦士ガンダム TVシリーズ』『勇者エクスカイザー』『装甲騎兵ボトムズ』と続いて、しばらく間が空いてしまいましたが、待望の『イデオン』がようやく実現しました。大好きな音楽だけにほんとうにうれしい。構成は早川 優さんが担当しています。

 4枚のCDに、TVシリーズの音楽集2枚と、「ドラマ編」LPに収録されていたBGM、劇場版サントラ2枚、そして、LP「未収録BGMコレクション」の収録曲をすべて網羅。さらには、「交響曲イデオン」までも収録した「総音楽集」の名にふさわしいアルバムになっています。

 『伝説巨神イデオン』の音楽はすぎやまこういち。1枚目の音楽集は、独立したアルバムとしても聴き応えのある構成で、あの曲順でまるごと覚えているというファンも多いでしょう。80年代にCD化された際は、曲順・選曲を変えた再構成版(「PTOLEMAIC SYSTEM」)が発売されていましたが、今回は、オリジナルの曲順を生かした構成になっているのがうれしい。

 ただ、本来なら、TVシリーズで2枚、劇場版で2枚、プラス「交響曲」1枚で5枚組にしたいところ。4枚のCDに収めるためにややムリをした構成になっています。「交響曲」は別に1枚もので出してもよかったのではないかなぁ。
 とはいえ、長らく入手不可能になっていた「音楽集2」や劇場版の音源、そして初CD化となる「ドラマ編」、「未収録BGMコレクション」収録曲が一挙に届けられたのですから、素直によろこびましょう。

 聴きどころは、TV版では羽田健太郎のピアノ、直居隆雄のギターなどが壮絶なセッションを繰り広げる「デス・ファイト」、劇場版では、『発動編』終盤の宗教音楽を思わせる壮麗な曲「カンタータ・オルビス」など。TV版はメロディを生かしたオーケストラ曲と、リズム・セクションが活躍するフュージョン風の楽曲、それぞれが印象的。劇場版はオーケストレーションの美しさがより前面に出た作品になっています。

 また、「交響曲イデオン」は、本格的な4楽章の交響曲として書かれた作品で、数あるアニメの交響組曲、交響詩作品などの中でも、最高傑作と呼べる作品のひとつです。小松和彦指揮による東京フィルハーモニー交響楽団の演奏。すぎやまこういちは70年代後半から、「オーディオ交響曲」と名づけたオーケストラ作品を発表しており、この「交響曲イデオン」は「交響曲第3番」と位置づけられています。『イデオン』のモチーフを使いながらも、独立した音楽作品として書かれているのですね。この曲もいつかコンサートホールで聴いてみたいものです。

 折しも、CSのファミリー劇場では『伝説巨神イデオン』を放送中。この放映であらためて『イデオン』の魅力にとりつかれたという人のためにも、今回の「総音楽集」はタイムリーな企画です。かつてファンだった方も、新しくファンになったという方も、すぎやまこういち音楽のすばらしさ、戸田恵子歌う「コスモスに君と」の美しさを、ぜひこのアルバムで確かめてください。
(「TVで使われているあの曲が入ってない…」という方もおられるでしょうが、それは大人の事情ということで…)

伝説巨神イデオン 総音楽集
 ジャケットは北爪宏幸の描き下ろし

 : 伝説巨神イデオン 総音楽集

イデの伝説 PRISMIX PLAYS IDEON
 こんなのもあります。大塚彩子率いるユニットPRISMIXが『イデオン』の音楽をリアレンジして演奏したオリジナル・アルバム。

 : イデの伝説 PRISMIX PLAYS IDEON

posted by 腹巻猫 at 20:18| CD

2009年08月25日

ブラジル風バッハ全曲演奏会

 8月22日、東京オペラシティコンサートホールで開催された「ブラジル風バッハ全曲演奏会」に足を運びました。

 すごいコンサートでした。ブラジルの作曲家・ヴィラ=ロボスの没後50年を記念して、彼の代表作である「ブラジル風バッハ」第1番から第9番までを1日で演奏しようという企画。「おそらく、世界初」の試みなのだそうです(指揮者ミンチュクの言葉)。歴史に残る内容といってよい。

 ヴィラ=ロボスは私がもっとも好きな作曲家のひとり。クラシックの作曲家ではラヴェルと、このヴィラ=ロボスがダントツで好きなのです。
 1887年にリオ・デ・ジャネイロに生まれたヴィラ=ロボスは、自身の生まれ育ったブラジルの土地に根ざした音楽を書き続けました。現代音楽の実験的な要素を持ちつつも、ブラジル独自の民謡の旋律やリズムをとりいれて、実に壮麗で躍動感に満ちた音楽を作り上げたのです。彼の音楽からは、南米の大地や空や森の情景・匂いが感じられるし、どことなく懐かしい親しみやすさがある。ブラジル国民からは「ブラジルの魂を表現した」と尊敬され慕われる国民的作曲家です。同時に、純音楽の分野で比類ないユニークな音楽を作り上げた独創的な作曲家でもありました。芸術家と大衆音楽家の両方の側面を持つ作曲家、イタリア人にとってのニーノ・ロータ、日本でいうなら伊福部昭と宮川泰を足して2で割ったような存在です。

 今回のコンサートで取り上げられた「ブラジル風バッハ」とは、原題を「Bachianas Brasileiras」といい、「ブラジルのバッハ風音楽」または「ブラジル風でまたバッハ風の音楽」を意味しています。ヴィラ=ロボスは1930年から1945年にかけて、9作の「ブラジル風バッハ」を発表しました。1つ1つが個性的で、たとえば楽器編成ひとつとっても、第1番は8本のチェロのみ、第2・3・7・8番はオーケストラ、第4番はピアノソロ、第6番はフルートとファゴットだけ、第9番は混声合唱、という具合にバラエティに富んでいます。そして、それぞれが10分から30分近い長さを持つ組曲なのです。
 全演奏時間はおよそ3時間。コンサートは、演奏者へのインタビューや休憩時間をはさんで、14時から19時まで、実に5時間におよぶ長さになりました。

 演奏は舞台音楽や映像音楽の演奏も多い東京フィルハーモニー交響楽団。指揮はブラジル・サンパウロ出身の俊英・ロベルト・ミンチュク。意外にもこれが初来日とのことです。

 プログラムは、編成の少ない作品から、厚い作品へと次第にスケールを増していく構成。
 バッハ風の瞑想的な旋律を持つ第6番からスタートしました。オーケストラ曲では目立つことの少ないファゴットがフルートとともに主役を張る作品です。
 2曲目は無伴奏合唱による第9番。CDなどでは合唱の代わりにオーケストラ演奏で収録されることが多く、オリジナルの合唱版が生で聴けるのは貴重です。
 3曲目にピアノ独奏による第4番。酩酊を誘うようなリズム、フレーズの繰り返しが印象的でした。
 そして、4曲目に8本のチェロが演奏する第1番。私は「ブラジル風バッハ」の中では、この第1番と次に演奏された第5番が大好きなのです。チェロだけのオーケストラが奏でる、スリリングでいて抒情的な曲想。ヴィラ=ロボスの曲では弦の低音域の使い方が印象的で、このチェロ8本だけの編成の曲にも、その特徴があらわれています。
 5曲目はソプラノと8本のチェロの共演による第5番。ヴィラ=ロボスのすべての曲の中でも、もっとも人気のある曲でしょう。ソプラノが歌うメロディの美しさに、ヴィラ=ロボスの名を頭に刻んだという人も多いはず。私も、学生時代、ラジオから聴こえてきたこの曲でヴィラ=ロボスを知りました。ソプラノ独唱は世界で活躍するオペラ歌手・中嶋彰子。「ブラジル風バッハ」を歌うのははじめてとのことでしたが、実に感動的な、すばらしい歌唱でした。情熱的でいて、ミューズのような神秘性がある。アリアの微妙な表現を的確に歌いあげて、コンサート中の白眉といえる演奏になりました。ドレスも個性的で、ブラジルの太陽をイメージした鮮やかなオレンジ色に子どもたちが描いたカラフルな絵をパッチワークしたロングドレス。今回のコンサートのために特別に手作りしたオリジナルの衣装なのだそうです。

 30分の休憩をはさんで、後半はオーケストラ曲です。
 ピアノとオーケストラによる第3番、ラテンパーカッションをフィーチャーした野性的なリズムを持つ第8番、「カイピラの小さな汽車」という副題を持つ第4楽章が有名な第2番、と続きます。
 実は、「ブラジル風バッハ」の中でも、オーケストラの曲はそんなに好んで聴いていなかったのです。小編成曲のユニークさに惹かれていた。今回あらためて全曲を生で聴く機会を得て、若いときには気づかなかったオーケストラ曲の魅力に気づかされて、大いに感銘を受けました。
 ヴィラ=ロボスのオーケストラ曲は、「劇場的」とでも形容したくなるふしぎな個性を持っています。「劇的=ドラマティック」でも「映像的」でもない。「劇場的」というのは、楽器ひとつひとつが役者のようにそれぞれ見せ場を持っていて、その役者たちがステージの上に鮮やかな一つの世界を作り出す、とそんなイメージです。

 そして、オーケストラ曲はパワフル。それぞれが4つの楽章を持ち、演奏時間も20分から30分くらいありますから、ちょっとした「交響曲」なみのヴォリュームを持っています。しかも、交響曲ならば、激しい楽章のあとにはゆったりした楽章があったり、軽快な楽章があったりして、4つの楽章のバランスが考えられているものですが、ヴィラ=ロボスの曲は、1楽章から4楽章まで、どれもテンションが高く、みんなオーケストラの全合奏で盛り上がって終わるような曲が並びます(第2番はちょっと違う)。テレビ番組でいうなら、最終回の盛り上がりが4回続くようなものです。情熱的で、踊りだすと止まらない感じ。このあたりがブラジル気質なんだろうなぁと思います。指揮のミンチュクも、リズムを強調する部分ではほとんど踊るようにして指揮していました。

 ラストの曲はオーケストラが美しく色彩感あふれる音楽を奏でる第7番。「ブラジル風バッハ」の中でも演奏時間が一番長く、楽器編成も最大規模の大曲です。長丁場のコンサートにもかかわらずオーケストラのテンションは落ちず、ミンチュクも渾身の指揮でオケをリードし続けました。第4楽章のフーガの盛り上がりには客席も一緒に高揚してくるのがわかる。
 伊福部昭を思わせる反復=オスティナート、民族的リズムもヴィラ=ロボス作品の特色のひとつです。伊福部作品では日本らしいエスニックな曲調になるのですが、ヴィラ=ロボスの曲では、ブラジルという土地を反映して、かつて南米に移民してきたヨーロッパの人々の音楽、特にスペインやポルトガルのリズムや旋律が盛り込まれています。さらに、アフリカの音楽の血が注ぎ込まれて、それが独特の「ブラジル風音楽」を作り上げている。この第7番にも、その「血脈」を濃厚に感じ取ることができます。

 鳴り続ける拍手に、指揮者のミンチュクが何度もステージに登場しましたが、アンコールはなし。全9曲の演奏を終え、指揮者もオーケストラも疲労こんばいだったのでしょう。でも、じゅうぶん満足でした。心地よい満腹感でいっぱい。幸せな1日でした。

 ふだんクラシックなんか聴かないという方も、機会があれば、ぜひヴィラ=ロボスを聴いてみてください。映画音楽にも通じる豊かなイメージとドラマ性、躍動感、美しい旋律、繊細さと壮大さ、音楽のあらゆる魅力が詰まっています。


<set list>

  1. ブラジル風バッハ第6番(1938)〜フルートとファゴットのための
     I アリア/ショーロ
     II ファンタジア
  2. ブラジル風バッハ第9番(1945)〜無伴奏合唱のための
     I プレリュードとフーガ
  3. ブラジル風バッハ第4番(1930[〜41])〜ピアノのための
     I プレリュード/序奏
     II コラール/セルタン(ブラジル奥地)の歌
     III アリア/カンティガ(歌、古謡)
     IV 舞曲/ミウチーニョ

    休憩

  4. ブラジル風バッハ第1番(1930)〜8本のチェロのための
     I 序奏/エンボラーダ
     II プレリュード/モヂーニャ
     III フーガ/コンヴェルサ(会話)
  5. ブラジル風バッハ第5番(1938/45)〜ソプラノ独唱と8本のチェロのための
     I アリア/カンティレーナ
     II 踊り/マルテロ(槌のひびき)

    休憩

  6. ブラジル風バッハ第3番(1938)〜ピアノとオーケストラのための
     I プレリュード/ポンテイオ
     II ファンタジア/デヴォネイオ
     III アリア/モヂーニャ
     IV トッカータ/ピカパオ
  7. ブラジル風バッハ第8番(1944)〜オーケストラのための
     I プレリュード
     II アリア/モヂーニャ
     III トッカータ/カチーラ・バチーダ
     IV フーガ

    休憩

  8. ブラジル風バッハ第2番(1930)〜オーケストラのための
     I プレリュード/カパドシオの歌
     II アリア/われらが大地の歌
     III 舞曲/舞曲の思い出
     IV トッカータ/カイピラの小さな汽車
  9. ブラジル風バッハ第7番(1942)〜オーケストラのための
     I プレリュード/ポンテイオ
     II ジーグ/クァドリーリャ・カイピラ
     III トッカータ/ヂザフィオ
     IV フーガ/コンヴェルサ

 ロベルト・ミンチュク指揮 東京フィルハーモニー交響楽団
 ソプラノ:中嶋彰子
 フルート:斉藤和志
 ファゴット:黒木綾子
 ピアノ:白石光隆
 合唱:新国立劇場合唱団
 司会:加藤昌則


Bachianas Brasileiras Nos. 2,3,4
Bachianas Brasileiras Nos. 1,4,5,6
Bachianas Brasileiras Nos. 7,8,9
 今回のコンサートと同じロベルト・ミンチュクの指揮による「ブラジル風バッハ」全曲録音アルバム。 演奏はサンパウロ交響楽団。

 : Bachianas Brasileiras Nos. 2,3,4

 : Bachianas Brasileiras Nos. 1,4,5,6

 : Bachianas Brasileiras Nos. 7,8,9

posted by 腹巻猫 at 03:55| ライブ/コンサート

2009年08月19日

ピクサー 強さの秘密 「メイキング・オブ・ピクサー」

 ピクサーの創立から快進撃にいたるまでを綴った本『メイキング・オブ・ピクサー』(早川書房)を読みました。

 ピクサー・アニメーション・スタジオの創立から、CGアニメづくりの苦闘、映画『トイ・ストーリー』のヒット、その後の快進撃まで、豊富な証言とエピソードでつづったドキュメントです。

 ピクサーの歴史は、CGアニメを作るための専用のハードとソフトを作るところからスタートしました。アップルやHPのように、ガレージのコンピュータ作りから始まったというところが、最初から「CGアニメ」を志向したピクサーならでは、です。当時はCGの黎明期で、コンピュータ・グラフィックスだけで1本の映画を作るなど夢のまた夢と思われていました。ピクサーは、「CGアニメ映画」実現のために、技術的な課題を一つずつクリアするところから始めたわけです。CGアニメ創世記のフィルム作りは技術開発と一体だったんですね。その技術が映画『スターウォーズ』や『スタートレック』などのCG映像に生かされたというのは、特撮ファンにも注目の裏話です。

 また、スティーブ・ジョブスがなぜピクサーを買ったのか不思議だったんですが、「映像処理に特化したコンピューター(ハード)とソフトのメーカーだと思っていた」というのが笑えます(でも、結果的にジョブスがピクサーを守ることになった)。

 ピクサーのすごいところは、技術だけで満足しなかったところ。あくまで目標は「アニメ映画づくり」にありました。物語づくり、キャラクター描写の弱さを補うためにさまざまな才能が集まってくる。その1人が、ラセターでした。このあたり、60年代の円谷プロみたいで読んでいてワクワクするところです。ディズニーに認められなかったラセターが、技術的にも工業的にもディズニーを超える作品を作り上げるドラマティックな展開は感動的です。

 ピクサーのロゴにもなっているスタンドランプのキャラクター(名前はルクソー・ジュニア)誕生秘話も楽しい。

 読み終えて、技術開発とエンターテイメントの追求、2つの志向が融合しているのがピクサーの強さなのだなぁと思いました。「コンピュータが作る」と思われているCGも、実はアニメーター次第で命が吹き込まれる(“アニメーション”の語源そのままに)。まだまだCGアニメの可能性はあるようです。

 ピクサーというユニークなスタジオが生まれた背景、ピクサーが映画界にもたらしたもの、そして、ピクサー作品の面白さの秘密など、興味が尽きない内容の1冊。ピクサーファンならずとも、映画ファン、アニメファンならぜひ読んでおいてほしい本です。ピクサーの技術と歴史が詰まったDVD『ピクサー・ショート・フィルム』も、ぜひあわせてご覧ください。

メイキング・オブ・ピクサー〜創造力をつくった人々
 

 : メイキング・オブ・ピクサー

ピクサー・ショート・フィルム&ピクサー・ストーリー 完全保存版 [DVD]
 劇場で長編作品の前に必ず上映されているピクサーの短編アニメを集めたDVD。ピクサーの草創期から現在に至るまでの歩みを関係者の証言で綴るドキュメンタリー「ピクサー・ストーリー〜スタジオの軌跡」を同梱。

 : ピクサー・ショート・フィルム&ピクサー・ストーリー

ディズニー・ピクサー・グレイテスト
 『トイ・ストーリー』から『ウォーリー』まで、ピクサー作品の主題歌・サウンドトラックを集めた音楽集。1作ずつサントラ盤をそろえるのは大変だが、この1枚で名曲がまとめて聴ける。ピクサーファン必携のアルバムだ。なお、日本盤は米オリジナル盤から2曲が削られ、代わりに『トイ・ストーリー』と『モンスターズ・インク』の日本版主題歌が収録されている。

 : ディズニー・ピクサー・グレイテスト

posted by 腹巻猫 at 12:30| 書籍・雑誌

2009年08月16日

夏コミ出店終了しました

 夏のコミックマーケット出店終了しました。

 ご来店いただいたみなさん、ありがとうございます。

 冬コミは未定ですが、またご縁があればお会いしましょう。

★お詫び

 新刊「劇伴倶楽部 2009.08増刊 プリキュア・サウンドトラック大全」に誤記がありました。

 P47 『プリキュアオールスターズDX』の録音日

   「2008年2月18日」(誤) ⇒ 「2009年2月18日」(正)

 でした。お詫びして訂正します。

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 8月14日(金) 10:00〜16:00
 会場:東京ビッグサイト
 場所:東地区 “O”ブロック-43b (東 O-43b)
 サークル名:劇伴倶楽部

 新刊できました。

 『劇伴倶楽部 Vol.5 渡辺宙明 Around 1990 Works』
 『劇伴倶楽部 2009.08増刊 プリキュア・サウンドトラック大全』

 詳細はこちら

 バックナンバーは下記2タイトル在庫あります。

 『劇伴倶楽部 Vol.3 池 頼広の世界』
 『劇伴倶楽部 Vol.4 渡辺宙明 1977-78 Works』

posted by 腹巻猫 at 10:47| Comment(0) | TrackBack(0) | イベント