作曲家の宇野誠一郎先生が4月26日に亡くなりました。84歳でした。
訃報:宇野誠一郎さん(毎日新聞)
“ひょうたん島”作曲者 死去(NHK)
昭和60〜70年代に子ども時代を過ごした世代には、『長靴をはいた猫』『悟空の大冒険』『ムーミン』『アンデルセン物語』『ちいさなバイキング ビッケ』『ふしぎなメルモ』『一休さん』といったアニメーション作品の音楽で〈宇野誠一郎サウンド〉が刷り込まれています。『ひょっこりひょうたん島』『ネコジャラ市の11人』などの人形劇も忘れがたい。実写ドラマでは、光瀬龍原作のNHK少年ドラマシリーズ『暁はただ銀色』(ジャズ・タッチの音楽がかっこよかった!!)、さいとうたかを原作の時代劇『無用ノ介』(主題歌は美空ひばり!)、クローニンの原作を倉本聰が脚色した『わが青春のとき』(シナリオを読んで泣いた)、井上ひさし原作・脚本による『國語元年』といった作品の音楽を手がけていました。
アニメ主題歌に顕著ですが、思わず体が動き始めてしまうようなリズムと跳躍の多いメロディ、それでいて哀感のあるリリカルな曲想が魅力でした。とりわけその持ち味が生かされたのが、ミュージカル仕立ての作品だったと思います。『ひょっこりひょうたん島』、『長靴をはいた猫』、『アンデルセン物語』(TV)などなど、宇野誠一郎の音楽があったからこそ、あれだけ楽しく、情感あふれる作品になったのではないかと思うのです。
私にとって宇野誠一郎は、心の芯に響く音楽を作ってくれた人でした。「ひょっこりひょうたん島」や「悟空の大冒険マーチ」の型破りの楽しさは、常識や理性でしばられた心を解放してくれます。いっぽう、「キャンティのうた」(『アンデルセン物語』)や「幸せをはこぶメルモ」などは、あからさまに悲しい歌ではないのに、聴いていると涙ぐみそうになってしまう。理屈ではなく、心の奥にある何かが反応してしまうのです。だからこそ、宇野誠一郎サウンドは40年、50年と時代を超えて愛聴され、歌い継がれているのでしょう。
70年代後半以降はアニメの仕事からは遠ざかってしまったのが残念でした。1978年の作品、『まんがこども文庫』ではオープニング主題歌とエンディング曲を担当。エンディングは月代わりで異なる作家が歌を作るというぜいたくなものでした。堀江美都子が歌ったオープニング曲「よんでいる」は、70年代アニメ主題歌の隠れた傑作と思います。
映像作品の仕事から離れたあとは、井上ひさしが主宰する劇団こまつ座の舞台音楽を多く担当していました。その音楽はCDアルバム『こまつ座の音楽』にまとめられています。
つい先ごろも、『悟空の大冒険』の音楽がCDとして発売され、このブログでも紹介したばかりでした。お年だったとはいえ、残念です。すばらしい音楽をありがとうございました。
◎宇野誠一郎 作品集I/宇野誠一郎 作品集II
品切れ中。今こそ再発してほしいアルバムです。

◎ひょっこりひょうたん島 ヒット・ソング・コレクション

◎悟空の大冒険 オリジナル・サウンドトラック
