すでにご存知の方も多いかと思いますが、仙台放送制作のDVD『続・昭和の情景』が9月18日に発売されました。
2009年12月23日に発売されたDVD『昭和の情景』の続編…というより、2本合わせて1つの作品として完成したといってよいでしょう。

『昭和の情景』『続・昭和の情景』は、仙台放送に残っていたフィルムを素材に編集・構成されたドキュメンタリーです。映っているのは昭和30〜40年代の日本(宮城・仙台)の情景。これが特撮ファンの間で話題になりました。というのも、1巻目には幻の「突撃!ヒューマン」のショーや『宇宙猿人ゴリ対スペクトルマン』ショー、『帰ってきたウルトラマン』ショーなどの映像が、続編にはウルトラセブンと快獣ブースカの撮影会、『仮面ライダー』ショー、『月光仮面』ショーなどの貴重な映像が収録されていたのです。
しかし、本当の見どころはそこではありません。高度成長期の街づくり、駅や道路や空港や公共施設、娯楽施設などが次々と整備され、そこに人が行き交う姿。そんな、時代の記憶が刻まれているところです。特に昭和30、40年代に少年時代・青春時代を送った人ならば、宮城県・仙台という地域性を超えて胸を打たれる映像だと思います。
もう一つ特筆すべきは、音楽を『ウルトラセブン』の冬木透が手がけていること。もちろん、書き下ろしです。ナレーションを矢島正明が担当しているのも泣けるところですが、メニューでは音楽のみを再生する設定に切り替えることも可能。冬木先生の新曲がじっくり聴けます。個人的には1巻目の仙台空港の映像に途中から流れる音楽がワンダバっぽくて好きです。
続編では、なんと音楽CDが付録に付きました。内容は、冬木透が作曲したBGMに藤公之介が歌詞をつけた「ぐいぐい走れ仙石線」、そして、オリジナル・カラオケをバックにした「ウルトラセブンのうた」の新録。歌っているのは、どちらもザ・ワンダースのオリジナル・メンバーです。
ザ・ワンダースとは、尾崎紀世彦、朝コータロー(当時は朝紘一)、小栗俊雄(当時は栗敏夫)の3人で1966年に結成されたコーラス・グループ。アニメ『ばくはつ五郎』の主題歌や『キャプテン・スカーレット』の日本版主題歌、特撮時代劇『妖術武芸帳』の主題歌を歌っています。そして、「ウルトラセブンのうた」を歌ったジ・エコーズがザ・ワンダースの変名だったことは有名な話。今回の新録は、実に40年ぶりのオリジナル・メンバーによる再録音だったのですよ。
のちに朝コータローさんは『スーパーロボット レッドバロン』の主題歌・挿入歌を歌い、尾崎紀世彦さんは『宇宙刑事シャリバン』の挿入歌を歌う(&出演もする)ことに。特撮作品とも何かと縁の深いメンバーなのでした。
実は、2010年7月29日に仙台で行なわれたザ・ワンダースの録音に立ち合わせていただきました。3人のお話では、「ウルトラセブンのうた」を歌うのは放送当時以来で、ショーなどでも歌う機会はなかったとのこと。今回は、当時の再現ではなく、40年経った現在の歌声として聴いてほしいそうです。
3人にお話を聞いて興味深かったのは、亡くなったヒデ夕樹さんとの交流。「また逢う日まで」のコーラスはザ・ワンダースのメンバー+ヒデ夕樹さんで録音したそうです。スタジオでいっしょになることも多かったとか。朝コータローさんはヒデ夕樹さんといっしょに日立のCMソング「この木なんの木」を録音しています(朝礼志名義)。
新曲「ぐいぐい走れ仙石線」は、冬木先生らしいやさしいメロディの歌。作詞の藤公之介さんは宮城県出身の作詞家・詩人で、『レッドマン』や『恐竜探検隊ボーンフリー』の作詞も手がけている人ですから、円谷プロとの縁も深いのです。人生を感じさせる味わい深い歌に仕上がっています。
続編にはさらに聴きどころがあります。石巻出身の作曲家・小杉太一郎が作曲した「カンタータ 大いなる故郷石巻」の演奏映像が収録されているのです。小杉太一郎といえば、アニメ『サイボーグ009』(1作目)の作曲家。その純音楽作品が、こんな形で聴けるとはなんとも感慨深いものがあります。
DVD『昭和の情景』『続・昭和の情景』は、昭和の貴重な映像をアーカイブした労作です。1巻には170ページ以上、2巻にも150ページ以上の解説ブックレットつき。冬木透ファン、特撮ファンならずとも、手にとっていただきたい作品です。
購入は仙台放送のサイトから可能。また、関東圏の一部店舗でも扱っています。
☆仙台放送 『昭和の情景』紹介ページ
☆仙台放送 『続・昭和の情景』紹介ページ

◎ザ・ワンダース・コンプリート・シングルズ&モア
2000年にテイチクから発売されたザ・ワンダースのベスト盤。残念ながら廃盤。

◎この木なんの木 [CD Single]
ヒデ夕樹と朝礼志(コータロー)が歌うCMソング。音楽は小林亜星。現行商品です。
